ただの実写化と侮るなかれ。クリストファー・ノーランのバットマン【バットマン ビギンズ編】
Ⓒ Patalex III Productions Limited

DCコミックスのヒーロー・バットマンを主人公とし、世界中で高い評価を受けているクリストファー・ノーラン版バットマンこと「ダークナイト・トリロジー」。
そうした評価の背景にはただの実写映画化として主人公のバックボーンを深堀りしただけでなく、貧困社会が生む闇や時に暴走する正義の恐ろしさをクリストファー・ノーランが見事に描き切っているからだと筆者は考えます。
そんな「ダークナイト・トリロジー」の見どころを【バットマン ビギンズ編】【ダークナイト編】【ダークナイト ライジング編】の3回にわたってお届け。
今回は主人公の過去とバットマン誕生を描く『バットマン ビギンズ』を紹介します。

義侠のヒーローの壮絶な背景を突き付けるリアリティな映像

「ダークナイト・トリロジー」の第1作目である『バットマン ビギンズ』。
主人公ブルース・ウェインの親を亡くした幼年期から大人になるまでの険しく苦しい道のり、バットマンが誕生する背景が描かれます。

『バットマン ビギンズ』で特に印象的に描かれているのがブルースの過去。
「両親を強盗に殺されたことで犯罪に復讐を誓う」という原作の設定をベースに、両親を殺した犯罪者に復讐しようとしたことで幼馴染に見限られると、その直後にマフィアのボスに自分が住む街がいかに腐敗しているかを聞かされ、犯罪者の心理を学ぶ放浪の旅の果てに犯罪に加担するようになる…と、なかなかハード。
しかも両親が殺されることになった遠因が、(トラウマがあったとはいえ)オペラに出てくるコウモリの仮装が怖くて、早く帰りたいとせがんだせいで強盗と出会うことになったというのですから、さらに複雑。
そんな過去をもつブルースは、旅先での犯罪で刑務所に収監されたことで謎の男ヘンリー・デュカードと出会い、ラーズ・アル・グールが率いる“影の同盟”の訓練で悪と戦う力と恐怖に打ち勝つ心を身につけます。
ですが、ラーズ・アル・グールの危険な思想を知ったことで彼らと離反。
その後、ゴッサム・シティに戻ったブルースはバットマンとしての活動を始めることになります。
こうして文字に起こしただけでもなかなかの壮絶な過去であることがわかりますが、『バットマン ビギンズ』の恐るべきところは、その壮絶さをリアリティをもった映像で突き付けてくるところであり、それこそが高い評価を得ている理由と言えるでしょう。

常軌を逸して腐敗しきった街「ゴッサム・シティ」

『バットマン ビギンズ』においてもう一つ印象強く描かれるのが、舞台となるゴッサム・シティの腐敗具合。
警官や行政がマフィアとつながっていて、汚職や犯罪が当たり前のように横行しているかなり治安の悪い街として描かれています。
その腐敗っぷりは警官であるゴードンが、口止めの賄賂受け取りを拒否する理由として「この街で賄賂なんか口止めとしての価値がない」と言ってしまったり、賄賂を受け取らないゴードンに対して「珍しい」とブルースが言ってしまうほど。
また、ゴッサム・シティには経済格差もあるようで、モノレールや大きな病院、大きなビルが立ち並ぶなど、発展している街としての面もあれば、スラムのような場所やホームレスも登場していることから一筋縄ではいかない模様。
最終的には腐敗したゴッサム・シティを消すために環境テロリストたちが襲撃してくるわけですが、こんな街にも善良な市民はいると、バットマンは環境テロリストたちと戦うことに。

個人的には正直よくこんな街に普通の住民がいるな…という気もするのですが、それはいかに日本が(比較的)平和な国で、それを当たり前だと思っているかを示しているのでしょうか。
ゴッサム・シティは極端な形かと思いますが、社会の闇について考えさせられる描写があるのも『バットマン ビギンズ』がただのアメコミ実写映画ではない評価を得ている大きな理由でしょう。

おわりに視聴方法など

今回は『バットマン ビギンズ』について2つのポイントから紹介してきましたがいかがでしょうか。
各配信サイトや直近だと以下のチャンネルで視聴可能ですので、少しでも気になった方は見て頂ければ嬉しいです。
それでは次回の【ダークナイト編】でお会いしましょう。

ザ・シネマ

[字]2020年7月4日(土)15:30~18:15
[吹]2020年7月8日(水)12:30~15:00
[字]2020年7月8日(水)21:00~23:30
[字]2020年7月24日(金)18:30~21:00

(情報は記事公開時点の内容です)

あなたにオススメ