世界最古の西部劇『大列車強盗』1903年・世界初の本格的アクション映画とは?

 映画が発明されてからまだ10年も経っていなかった1903年に制作された世界最古の西部劇『大列車強盗』をご紹介します。アクション、サスペンスなど、現代の映画の原点がここにあると言われている歴史的な作品です。

映画の誕生…そこに物語はなかった

 そもそも映画が発明されたのは1995年のフランス。写真家の父を持つ発明家のリュミエール兄弟による『工場の出口』が歴史上最初の映画とされています。しかしどうでしょう? 画面は動かず、工場の門から出てくる人々がただ写っているだけのわずか46秒の映像は、われわれの知っている映画とはちょっと違う感じがします。

 こちらの映像は映画誕生の裏側に迫ったドキュメンタリー『リュミエール!』(2016年)の日本公開時に作られた、落語家の立川志らく氏のナレーション入りのものです。もちろんモノクロで、もともと音声もありません。当時の感覚では写真が動いた! というだけでも大きな発明で、1分にも満たない映像を見るために多くの人が驚き、映画は世界に広がっていきました。

アメリカで大きく動き出した映画の歴史

 それから8年後の1903年。リュミエール兄弟と同時期にアメリカで映画撮影の技術を開発していた発明家のトーマス・エジソンが立ち上げた「エジソン・スタジオ」で『大列車強盗』は作られました。この作品は現在、アメリカ議会図書館によって保存・修復されて公開されています。 議会図書館のサイトでは直接動画をダウンロードすることもできます。 https://www.loc.gov/item/2017600664/

 『工場の出口』と見比べてみてどうでしょうか? 物語がある、というだけでかなり印象が変わります。駅の連絡室に強盗が押し入って、列車に乗り込み、乗客を外に出し、金品を強奪…という犯罪の様子が描かれ、終盤は目撃者の通報、保安官の出動、そして犯人たちとの銃撃戦…。たったの約13分間に、これだけの要素が順序良く、シンプルに並べられています。
 それに映画にとって大きな進歩だったのは、カメラが動いたことです。列車から逃げていく強盗たちを画面が横に動いて追っているだけで、かなり映画らしく見えてきます。

実は日本も同時期にアクション映画が作られていた?

 一方、日本でも似たような題材で初めての劇映画が作られていました。しかも『大列車強盗』より4年も早くにです。明治時代、日本で初めて発生した拳銃を使っての強盗事件を題材にした『ピストル強盗清水定吉』(1899年)という作品です。こちらの作品にも強盗と警察官とのアクション場面があったといわれていますが、残念ながらフィルムは現存せず。もしも写真か映像の一部でも残っていれば世界的にも貴重な作品になるところでした。

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