ファンタジックばかりがアニメじゃない、『聲の形(こえのかたち)』

ファンタジックなアニメもいいけど、たまには真摯に問題に向き合うアニメも良いのでは?『聲の形(こえのかたち)』は“コミュニケーションの難しさ”というものがシビアに丁寧に描かれ、思い悩み、あがく若者たちの姿が捉えられている。ひとりでじっくりと見るもよし、親子で見てみるのもいいんじゃないだろうか。普段なかなか話せない思いを話したくなるかもしれない。

いじめ問題に真摯に向き合った青春ドラマ

『週刊少年マガジン』で連載された大今良時原作の同名ベストセラーコミックの劇場アニメ化。いじめ問題に真っ向から向き合い、人と人が関わることの難しさを丁寧に繊細に描いた青春ドラマだ。“京アニ事件”でスポットが当たることになった京都アニメーションがアニメーション製作を担当し、定評通りのクオリティ高い映像も美しい。重いばかりでないコミカルさもわざとらしくなく、スパイスになっている。

ある出来事から心を固く閉ざしていた将也は…

ガキ大将の石田将也は退屈が大嫌いな小学生。転校してきた聴覚障害を持つ西宮硝子に好奇心を持って接し、退屈から逃れられるようになった。しかし、硝子とのある出来事がきっかけで将也は周囲から孤立してしまう。将也は中学校、高校へと進んでも周囲と打ち解けることなく、孤立したままでいた。固く心を閉ざしていた将也だったが、ある決心をして硝子のもとを訪れる…。

答えをもらうのではなく考えることから始めてみては

この作品のキモは決してお涙頂戴の勧善懲悪ではないところ。主人公はいじめられたヒロインではなく、もともとはいじめる側だった将也だ。けれど、いじめっ子が天罰を受けたり、あるいは謝って和解したりしてメデタシというような単純なストーリーではない。周囲の者もみな複雑な思いを抱いている。だからこそ、人と人が関わることや相手を理解することの難しさを考えさせてくれる。思考停止して答えをもらうのではなく、この作品が考えることのきっかけになればいいと思う。

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