手紙を書けば、伝えられる想いがある。『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

京都アニメーションが手掛ける美麗なアニメーションと、心に響く音楽、そして「手紙」を軸に描かれる感動的なストーリーが話題を呼び、アニメファンから根強い人気を誇るTVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。
その後日譚であり、主人公ヴァイオレットと彼女が慕うギルベルト少佐の行く末を描いた『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、公開が始まるや否や「ハンカチじゃ足りないくらい泣くから大きいタオルを用意した方が良い」との声もあがるほどファンの心をつかみ、高い評価を受けました。
それを裏付けるかのように、公開17日で観客動員数78万人、興行収入11億円を突破し、大作を抑えて3週連続でスクリーンアベレージ1位を獲得しています。
そんな『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を、浴用タオルをぐちゃぐちゃに濡らしながら鑑賞した筆者が感想を交えながらご紹介。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』とは?

2018年1月~4月にかけて放送された、京都アニメーション制作のTVアニメ作品。
幼い頃から兵士として生きてきたため心が育まれてこなかった少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンが、自動手記人形(ドール)と呼ばれる手紙の代筆業を通して人の心や愛を知り、成長していく姿を描いています。
基本的に1話完結型のストーリーで構成されており、親子愛、兄弟愛、恋愛など、毎話ごとに異なる“愛してる”を京都アニメーションが美麗なアニメーションで繊細かつダイナミックに描いているのが特徴です。
また、2019年9月6日には『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 永遠と自動手記人形』が劇場公開されており、そちらでもTVシリーズの後日譚が描かれています。

あらすじ

戦争が終結して数年が経ち、新しい技術によって人々の生活にも変化が訪れていた。
C.H郵便社で手紙の代筆を生業とする自動手記人形(ドール)として働くヴァイオレット・エヴァーガーデンは、これまで数多くの代筆業をこなしてきたことで各方面から依頼が舞い込むようになり、忙しい日々を過ごす。
だが、戦場で行方不明になってしまった敬愛するギルベルト少佐のことが忘れられず、心のどこかでギルベルトが生きていることを願うヴァイオレットの思いは行き場を失うばかり。
そんなある日、ヴァイオレットのもとに、ユリスという少年から手紙の代筆依頼が舞い込む。
依頼を引き受けたヴァイオレットは、ユリスとともに、彼の家族への手紙を書き始めるのだった。
一方、C.H郵便社の倉庫で一通の宛先不明の手紙を見つけた社長のホッジンズは、その筆跡に見覚えを感じ…。

TVシリーズから少しずつ変わっていく時代と人々

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』では、戦争終結から年月が経ったことで、街も人も、少しずつ変化している様子が随所にみられます。
先に公開された『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 永遠と自動手記人形』で電波塔を建設している描写がありましたが、今回の劇場版ではついに電話が登場。
まだ市場に出回り始めたばかりなのか、ヴァイオレットの同僚であるアイリスが「妙な機械」と称しているのが印象的です。

また、変化しているのは街だけでなく人も同様。
主人公のヴァイオレットだけでなく、C.H郵便社の同僚であったエリカが自動手記人形を辞めて小説家になろうとしているなど、ヴァイオレットの周囲を取り巻く人々にも変化が見られます。
中でも、ヴァイオレットにとって大きく関係性が変わったのが、ヴァイオレットが敬愛するギルベルト少佐の兄で海軍大佐のディートフリート。
TVシリーズではヴァイオレットに対して憎しみや恐れが入り混じった複雑な感情を抱いていたディートフリートですが、TVアニメ最終話を経たことでヴァイオレットに対する感情が変わり、『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』では穏やかな目つきになるとともに態度も軟化しています。

こうした変化のひとつひとつは、ファンにとって大きな見どころになっているのではないでしょうか。
筆者もディートフリートの変わりようには驚くとともに、TVシリーズでホッジンズ社長がヴァイオレットに言った「してきたことは消せない。でも、君が自動手記人形としてやってきたことも消えないんだよ」という言葉が、ここで効いてくるのだなぁとしみじみ感じました。

もう一つのストーリーへと転じていくイントロダクション

本編に入る前にぜひ注目していただきたいのが、作品の世界感を説明する冒頭部分。
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』では、TVシリーズから長い年月が経った後の世界からスタートし、ある少女が、かつて自動手記人形という職業に興味をもったことから本編に導入していきます。

イントロダクションが世界感の説明を担いつつも、ヴァイオレットの功績を辿るインターバルとしても展開していくのが見どころ。
本編の進行とともに、ヴァイオレットたちが後の時代でどうなっていったのかを知ることができるため、ストーリーがその後どう展開していくのか、予想と期待感を盛り上げてくれるものになっています。
インターバルとして本筋とリンクしながらも、最終的にはヴァイオレットたちとは違う時代のもう一つのストーリーとして成立していく構成は見事なものでした。

なお、歴史を辿っていく少女の正体は、TVシリーズで“涙腺崩壊”を引き起こしたある話数で登場した人物の孫。
筆者は公式サイトなどで前知識を仕入れずに映画に臨んだのですが、このニクイ演出で冒頭から涙腺を刺激されてしまいました…。

「愛する人へ送る、最後の手紙。」をめぐるストーリー

TVシリーズの頃からファンの心を掴んで離さないのが、その感動的なストーリー。
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』では、ヴァイオレットとギルベルト少佐の行く末だけではなく、依頼者の少年ユリスをめぐる家族と友情、前述のヴァイオレットの功績を辿る少女の三つの物語が、それぞれ「手紙」を軸に展開されます。
ヴァイオレットからギルベルトには親愛を、少年ユリスは友愛を、インターバルの少女は家族愛を、それぞれ手紙という形でつづるのです。
三つの手紙に込められた思いが結実していく様は、そのどれもが優しくて温かいものであり、自然と涙がこぼれてしまうのも『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』らしいところ。

現代に生きる私たちにとって手紙を出す機会というのは減ってしまったかもしれませんが、想いを文字にするという文化は、形を変えて残り続けています。
「言葉にするのは難しくても、文字にすることで伝えられる想いがある」ということを心に刻んでくれる『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のストーリーは、あなたにとっての愛する人へ、何かを伝えるきっかけになってくれるかもしれませんね。

「アニメーションは総合芸術」を見事に体現した作品をぜひ劇場で!

「アニメーションは総合芸術」と評する人もいるように、監督、演出、音響、アニメーター、声優などなど…、一つの作品を創り上げるのに多くの人が関わっています。
今回はストーリーにフォーカスしてご紹介しましたが、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は演出や音楽など、多方面で高い評価を受ける作品。
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』でもその総合力の高さは健在で、関わった一人一人の熱意とこだわりがひしひしと感じられ、あらゆる面で高いクオリティの仕上がりになっています。
アニメファンはもちろん、普段アニメを見ないという方も、ぜひ一度「総合芸術を体現した」といっても過言ではない『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

なお、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 永遠と自動手記人形』はNetflixで配信中。

(情報は記事公開時のものです)